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新人獣医師のカルテがSOAPにならない理由:教育を「添削」から始める

2026年9月7日公開|執筆:保坂創史(獣医師・日本獣医がん学会 獣医腫瘍科認定医Ⅰ種)

新卒の獣医師が書いたカルテを見ると、Sの欄に身体検査の所見が書いてあり、Aの欄に飼い主さんの訴えが混ざっている。「SOAPで書いてね」と伝えても、数週間するとまた混ざる。多くの病院で繰り返されている光景だと思います。

私はこれを「書き方の問題」として指導するのは効率が悪いと考えています。カルテがSOAPにならないのは、書く段階ではなく、診察そのものがまだSOAPの構造で組み立てられていないからです。

カルテは診察の思考の写しです

ベテランのカルテが自然にSOAPになるのは、頭の中が「飼い主さんの訴えを聞く→自分の目と手で確かめる→解釈する→計画する」という順で動いているからです。新人はまだこの流れが身体に入っていないので、聞くことと考えることが混線します。混線した思考をそのまま書けば、混線したカルテになる。当然の結果です。

だから指導すべきはカルテの欄の使い方ではなく、診察の組み立てのほうです。ただ、ここに教育の実務的な壁があります。診察の組み立てを指導するには、新人の診察を見ていなければならない。しかし院長が全部の診察に立ち会う時間はありません。

録音と文字起こしは「あとから立ち会う」道具になります

そこで使えるのが診察の録音です。新人の診察を録音しておけば、あとから文字起こしを読むだけで、その診察に事後的に立ち会えます。どの質問が抜けたか、飼い主さんの重要な一言をスルーしていないか、説明が専門用語のままになっていないか。立ち会わずに全部見えます。

振り返りの具体的なやり方

週に1回、新人の診察を1件選んで、①文字起こし(実際の会話)②そこから整理されたSOAP ③自分ならどう書くか、を並べて15分話す。これだけで十分です。ポイントは、会話とSOAPを並べて見せることです。「この飼い主さんの一言はSに残すべき情報だよ」「ここで体重の推移を確認していれば、Oがもっと強くなったね」と、実物ベースで指摘できます。抽象的な「ちゃんとSOAPで書け」より、はるかに速く伝わります。

録音の振り返りは、指導する側にも発見があります。自分の診察を文字で読むと、口癖や説明の飛ばしグセが客観的に見えます。新人教育のつもりで始めて、自分のカルテの質が上がった、というのはよくある副作用です。

「書けない」を責める前に、材料を揃える

新人がカルテに時間がかかるのは、記憶から再構成しているからでもあります。会話の記録が手元にあれば、思い出す作業が消えて、整理に集中できます。新人が書けないのではなく、書くための材料が手元にない。カルテ教育で先に直すべきはそこだった、というのが私の実感です。

VKA:文字起こしとSOAPが「教材」になります

当社の Vet Karte AI(VKA) は、診察中の会話を録音するとAIが文字起こしとSOAP形式のカルテ案を自動生成します。新人の診察を録音すれば、「実際の会話」と「SOAPへの整理のされ方」を並べて振り返る教材がそのまま手に入ります。録音音声は3日で自動削除・AIの学習には不使用。月30分まで無料で試せます。

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保坂創史
執筆:保坂創史(獣医師)
プラシア合同会社 代表社員。南大沢どうぶつ病院・多摩八王子動物がんクリニック院長。日本獣医がん学会 獣医腫瘍科認定医Ⅰ種。自院の診療で感じた課題をもとに、獣医師向けAIツール(VRA・VKA・VetsLogic・VetCall・VetLink)を開発しています。プロフィール詳細